Kaoru Saito’s Column

FULLMOON

2024年10月 牡羊座の満月🌕

人間は2種類しかいない。
考えている人か、何も考えていない人か?

人として、軽い薄い浅い……そう言われてしまうのは、
結局どんな人なのか?


「あの人、見てくれイイけど薄っぺらい感じ」
「彼っていい人だけど、いかにも軽そう」
“薄っぺらい”とか“軽い”とか、はたまた”浅い“とか、私たちはそれこそ軽いおしゃべりの中でたびたび口にする。もっぱら男たちの噂をする時に。いや男性同士のおしゃべりでも同じように使われているはず。言うまでもなく、異性の品定めにおけるNGワードである。だから誰もが分かっているその感じ。
ただそもそも、人間が薄い軽い浅い……その定義とは何なのか? 考えてみると非常に曖昧。どこか表面的で軽々しいというような、何となくの印象でしかない。となれば自分もうっかりそう見られている可能性がなくはなく……。そう見える理由をもう少し深く知っておきたいところ。


考えているか、考えていないか
それで人間決まってしまう


社会における人間の在りようを、“是か非か”にバッサリと2つに分けてしまう言い方が幾つかあるけれど、最も説得力があるのがこれ。人は、考えているか、考えていないか、どちらかであるという基準。確かにそう。少なくとも職場において、決定的に人の能力を分けるのは考えているか、何も考えていないか。それに尽きるのではないだろうか。今改めてこれを問題にしたいのは、昨今、何も考えずに仕事をする人が増えていると言われるから。
「最近の若い人は考えて仕事をしない」
「自分は何をすればいいのかを考えない」
「何も考えていないから自分から動けない」
そんなふうにぼやく管理職が増えているというのだ。そこはやはりネット検索どころではない、生成AIまでが登場してしまう時代、本当に自分で考えなくていいと思う人が増えてくる。でも結局のところ、考えないと言われたことしかできない、何かを先回りしてやることができない、本当にすべきことができない、ということになりがち。
また何か失敗してもなぜ失敗したのか、どうしたらもう失敗しないのかと考えないから同じ失敗を繰り返してしまいがち。資料がコピペばかりだから説明ができない。誰かが言ったことの受け売りばかりだから理屈が通らない。最終ゴールが見えていないから、すべきことの順番がバラバラ………などなど。
だから考えない人は仕事ができないという、とても単純な図式が成り立ってしまうのだ。やはり考えている人が結果を出す。ちゃんと先のことを考えて、想像力たくましく、全体を見ながら全てを理解しながら前に進める人だから。


考えて言葉を発しているか、
何も考えず言葉を書き集めるか


しかし考えているふりだってできてしまう時代、それどころか自分が考えているつもりになってしまえる時代でもある。ただ傍目にはちゃんと見えているのだ。考えているのか、考えていないのか。
そして初対面でさえ、それって不思議に見えている。おそらくはそれが薄い軽い浅い、につながってくるのではないだろうか。
結局のところ言葉。考えて言葉を発しているか、何も考えずに言葉をかき集めているか、その違いは明快だと言うことなのである。ちなみによく考えている人は、やはり言葉をたくさん持っている。なぜなら“思考”というものは、”言葉という積み木“でしか組み立てられないから。
もちろん難しい言葉を使いましょうと言っているのではない。ただ要は、話す言葉の組み立て方でしか、人間の深みを示せないと言いたいのだ。ちゃんと考えれば、自然に言葉が上手に組み立てられ、厚みを持っていく。まずは考えることなのである。
例えば初対面の時、相手の職業を手掛かりに、相手が興味を持つ話題を探し出してはどんどんと話を広げていく。いつの間にか相手が話に夢中になってくる。やがて相手はきっとこう思うのだろう。こんなに私を理解してくれる人にはめったに会えない。何か昔からよく知っている人みたい……そんなふうに思わせる人が、薄いとか軽いとか浅いとか思われるだろうか?
ちなみに、一見軽く見えるのに、話してみると実は重厚な女だったりする魅力は、本当に尊いもの。相手はあなたに夢中になるだろう。そういうギャップ、ちょっと狙ってみるのも良いかもしれない。

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Kaoru Saito

齋藤薫

美容ジャーナリスト
/エッセイスト

齋藤薫

美容ジャーナリスト/エッセイスト

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。最新刊は初めての男モノ『されど、男は愛おしい』(講談社)。また『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など多数。