Kaoru Saito’s Column

FULLMOON

2024年9月 蠍座の満月🌕

“1人”でいることが上手な人ほど、
“2人”でいることも上手?

● 幸せ常勝国、北欧の人々は、年に数回しか人と合わないのに孤独を感じない

幸福度の高い国ランキングで、毎回上位を占めるのが北欧諸国、フィンランドやノルウェー、デンマーク、スウェーデンといった国。そして彼らの幸せが、特にデンマークで生まれた価値観「ヒュッゲ」に基づいていることもよく知られている。この「ヒュッゲ」、かつてコスメキッチンの年間テーマにもなったモノの考え方。「居心地がいい空間」や「楽しい時間」のことを指す言葉で、幸せとは“お金や物質や地位”などで得るものではなく、日常の小さな喜びから生まれると捉えるもの。日本語に訳せば「ゆったり」「ほっこり」に近い感覚と言えるのだろうか?
当然そこには“人との触れ合い”という要素も入ってくるわけだが、実際にこうした北欧の国々では、年に数回しか人と触れ合わない生活も珍しくないと言われる。雪深かったり、家と家の距離が遠かったりする環境の問題もありながら、年がら年中人と会って騒ぐという習慣がもともとなかったりする地域も多いというのだ。
ただそれでも人々は「孤独」というものを感じないと言われる。自然と共に生き、まさしく日常生活の中に小さな喜びをいくつも見つけることができるから。もともと「一人ぼっち=孤独」という概念がないのだ。


● 一人ぼっちが孤独なのは、大昔の話。1人でいる方が幸せ?な理由

1人でいると孤独……そういう風に決めつけるのは周りであって、本人が孤独を感じないケースはいくらでもある。そもそも孤独と言う感情は、人類が、集団になって生活するようになった時、1人だと食料を得るのにも苦労するし、命の危険にさらされることから、1人でいてはいけないという危機感から生まれた意識だと言われる。
つまり十分に安心できる環境があれば、1人でも孤独を感じないという感情の仕組みがあるとのことなのだ。
ましてや、集団の中にいる方が孤独を感じることもあれば、会話のない夫婦など2人でいる方が孤独を感じてしまうと言うケースはいくらでもある。だから“望んだ一人ぼっち”は少しも孤独では無いのである。
一方に今こんな説がある。1人でいたほうが自己肯定感が高まると……。それは、相手が自分を認めてくれないから、褒めてくれないから、といった原因からではない。例えば相手が不機嫌になったり、気持ちがネガティブになっていると、それが自分の生活自体の、ひいては人生自体の評価を低くしてしまうから、に他ならない。つまり相手の悪い部分をそっくりと背負ってしまい、いたずらに自己肯定感が低くなったり、不幸感を感じたりするケースが少なくないと言うこと。
“もらい事故”ではないけれど、相手の影響をそこまで受けてしまうのが、“共同生活”のデメリットであるということなのである。


● 望めずに1人になったとしても、それは1つのチャンスと考えて

逆に1人で生きると、幸せか不幸かも自分で決められる。そういう場面で、ヒュッゲのようにとても些細なことにも幸福感を感じられる価値観を持つことで、人は十分に幸せになれるのだ。
これは何も、「さぁ1人で生きましょう」と言う話ではない。2人でないと得られない幸福もあれば、たくさんの人との触れ合いでこそ感じられる幸福感もあるはず。でも、そうでない幸せも充分にあるということを知った上で、人生をやっていきたいということなのだ。
1人の時間が長ければ、誰かとご飯を食べる時間をとても大切に思うようになるだろうし、そういう丁寧な暮らしが、自己肯定感をも高めてくれるはず。言い換えれば、1人でいることが上手な人ほど、人との付き合い方も上手。2人で生きることも実は上手……そう言えるのかもしれない。何よりも、1人でないと達成できないことが、あまりにも多いことに気づくはず。
だから望まずに1人になったとしても、大丈夫。1つのチャンスと思って1人の環境を大切に生きてみて欲しい。1人でも2人でも、集団の中でも、きっと豊かな幸せが得られるはずだから。

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Kaoru Saito

齋藤薫

美容ジャーナリスト
/エッセイスト

齋藤薫

美容ジャーナリスト/エッセイスト

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。最新刊は初めての男モノ『されど、男は愛おしい』(講談社)。また『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など多数。