Kaoru Saito’s Column

FULLMOON

2024年7月 山羊座の満月🌕

旅が好きな人に不幸な人はいない。
しかも旅の幸せが一生続く理由

●傷心旅行が、終わってみたら“幸せを見つける旅”になっていた?

知り合いにこんな人がいる。大失恋をして、いわゆる“傷心旅行”に出かけたら、地中海をめぐる船の上で知り合った人と恋に堕ちて、たちまち結婚……、傷ついた心を癒すための旅が、終わってみたら、新しい幸せを掴む旅になっていたという人が。
人生そんなふうにうまくいくものだろうかとも思うけれど、そういう人生の番狂せわせを不意にもたらすのが、旅の醍醐味だと言ってもいい。ロストバゲッジなどの不幸なことがあったとしても、それすら後になれば愉快な思い出になる、これは旅だけがもたらせる非日常の魔法。何であれ、自分の日常のメニューにはないことだから、経験全てに幸福感を感じられるはずなのだ。
でも、ひょっとしたらそれ以上に幸せな時間かもしれないのが旅の計画。まずどこの土地に行こうかという始まりから、どこに泊まろうか、何をどこで食べようか、どんなスポットに行こうか、そもそもそこで何をしようかというプランニングは、明るい未来だからこそ、全ては希望。嫌なことを一切排除し、嬉しいことだけを計画する試みだからこそ、喜びに満ちた時間になるのだ。
それを組み立てていく幸せは、ちょっと他のことでは体験できない。旅が好きな人ならわかるだろう。だから、旅が好きな人に不幸な人はいないって。


●行かなくても行った気にさせてくれる旅の動画の使い方

旅の計画を立てる時、昔は旅のガイド本でイメージを膨らますしかなかったけれど、
今は旅行者が挙げるYouTubeが山ほどあって、空気感までをトライアルすることができる上に、口コミを頼りに、旅の失敗はずいぶん避けられるようになった。
ちなみに忙しくて、または円安につき(だから国内旅行も法外に高くなって)旅に行けない時も、そういう動画を見て旅気分に浸れるようにもなった。もちろんYouTubeもピンからキリまであり、個人的には「マイバル トラベル」という有名なブログ一択。旅に行けない時も、美しい映像と素敵な編集、運営するMAIさんとご主人のお人柄で見事に旅情を体感させてくれる。その影響ですっかりタイにハマっている今日この頃。
いつの間か、何か気持ちが落ち着かない時、嫌なこと辛いことがあった時まで、このブログを見るようになったのは、癒しの時間に加えて現実逃避をさせてくれるからなのだろう。旅による非日常の魔法は結構とてつもないのである。


●旅が終わってしまう虚しさを消し去るのが、次の旅の計画

話を元に戻して、旅の計画が幸せなものであるほどに、それを実行に移す実際の旅では、1日1日終わるほどに何だか寂しくなってくる。楽しければ楽しいほどその旅が終わってしまう悲しみが募ってくる。旅において唯一不幸なのがこの虚無感なのだ。
そう、だから旅上手は、その旅が終わりに近づく頃に、あえて次の旅の計画を始める。旅先での食事でここが良かったね楽しかったねという話の合間に、「次はどこに行きたいか?」という対話を差し込むと、旅に、ジ・エンドはない、毎回がto be continued……終わりのないドラマなのだということに気づくはずなのだ。だから幸せも続く。
既にリタイヤしたある夫婦は、年に4回海外旅行に出かけ、日本にいるときは常に次の旅の計画はもちろんのこと、次に行く国のことを深く知る勉強をするのだそう。これをやるのとやらないととでは行った時の充実度が違うという。それはそうだろう、ありきたりの観光地だけで終わるのでは、旅はいつも人混みの中に身を投じるものというふうになってしまう。そうではなくてそこに行く自分なりの目的を探すべきなのだ。
この国ならば寺院周り、この国ならば古城に泊まり歩く、この国はやっぱり伝統料理のグルメ三昧と言うふうに。そういうテーマを持つと、旅が終わったときに大きな達成感が得られるはず。それもまた終わりなき旅の喜び。一つ一つ目的を達成していく喜びは、それだけで心を満たし、いつの間にか人生を充実させてくれるはず。日常に飽きてきたら、心が暇になったら、嫌なこと辛いことがあったら、終わりなき旅のページめくりを始めて欲しい。未来に幸せを呼び込むために、今日から旅の計画を始めよう。

read more

Kaoru Saito

齋藤薫

美容ジャーナリスト
/エッセイスト

齋藤薫

美容ジャーナリスト/エッセイスト

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。最新刊は初めての男モノ『されど、男は愛おしい』(講談社)。また『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など多数。