Kaoru Saito’s Column

FULLMOON

2024年2月 乙女座の満月🌕

理屈を超えてモテるのは
水を感じさせるヒト

●なぜ鼻声の人は、色っぽいの?

例えば、風邪をひいたときのいわゆる鼻声……本人にとってはわずらわしく違和感があるだけかもしれないけれど、こんなふうに言われたことは無いだろうか。「今日は妙に、色っぽいね」

そう、鼻声は色っぽいのである。なぜならば、体の中に水を感じさせるから。日本には古くから、「水もしたたる良い男」という言い方があったが、これは歌舞伎「助六」の水入りの場面や落語の「崇徳院」などで、みずみずしく魅力的な美男を称賛するときに使われた言葉。江戸時代には男女ともに使われ、「水もしたたる良い女」と言う風に謳われることのあったという。

一方で日本の美人画の中には「洗い髪の女」と言うカテゴリーがあって、洗いたてのまだ濡れた髪をといている女性はそれだけで美しいという見方があった。いやそもそも、お風呂上がりのまだ肌が温かい湿気を含み、しっとりしている上にピンク色に上気している女性こそが最も美しいと言う概念があったからこその「洗い髪の女」なのかもしれない。

●人は水のそばにいるとそれだけで幸せ?

いずれにしても、男女問わず“水を含んだ人は美しい”という美意識が日本には歴史的に息づいていることの証。

それも単に美しいだけでなく、水の気配を湛えた人は極めて好感度が高い。人を自然に惹きつけてしまうと言っても良い。「水もしたたる良い男」は歌舞伎で、「洗い髪の女」は絵画で、いわばどちらも芸術の世界で特別な魅力を称えられてきたわけで、それは水を目にしただけで人を幸せにすることを意味している。それってなぜだかわかるだろうか?

これは日本に限らず世界中で同じことが言えるが、人類の祖先は海の中で生まれ、進化を遂げて地上に上がった瞬間から、乾きとの闘いを繰り広げてきた訳で、結果として人間はもちろん、地上の生物は水がなければ生きていけない。だからこそ水がそばにあることが、生き物にとっての無上の喜びであり幸せ。雨や泉は神の恵みなのだ。そういう意味で、水を感じさせる人はそれ自体が人を惹きつける特別な力を持っていると考えていいのである。

●体中あちこちが潤んでいる人になりたい

もっと言うならば、水を含んでいることがいわば生殖能力の高い個体として映るという側面もあるようで、だから異性を選ぶときに水をたっぷり含んだ者を選ぶという1つのメカニズムにつながっているのだ。
鼻にかかったような湿った声の持ち主が、それだけでセクシーに映るのもそのため。
今トレンドの艶肌も、濡れたような艶を持った肌。もともとがしっとりとみずみずしい肌は美肌の絶対条件と言ってもいいし、最も上質な肌は透明度も高く活力もあるから、肌の中を水がサラサラ清流のように流れているイメージをもたらすと言う。

肌だけじゃない、「潤んだ瞳」も「潤んだ唇」も最上級の評価と言える。つまり基本的に水分量の多い人は、やっぱり肌も瞳も唇も全身の至るところが潤っている。そういうものだということ、改めて意識したい。理屈抜きに人を惹きつける才能の1つとして、やっぱり水もしたたるヒトでいたいと。

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Kaoru Saito

齋藤薫

美容ジャーナリスト
/エッセイスト

齋藤薫

美容ジャーナリスト/エッセイスト

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。最新刊は初めての男モノ『されど、男は愛おしい』(講談社)。また『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など多数。