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Kaoru Saito's Column

今、本当の美しさは鏡に映らない。
むしろ鏡を覗く暇すらない人たちの
美しさにこそ宿るもの!

最近とくに思う。美しさとは、本当の美しさとは、鏡に映るものでは無いのかもしれないということ。何かに無心に取り組んでいる、その直向きさこそが、美しさであると。だからむしろメイクもできない、鏡を覗く時間すらない仕事についている女性ほど、真の美しさを持つ人たちと言えるのではないかと。

少し前に入院をした。毎日毎日、小さな感動の連続だった。言うまでもなく看護師さん達の素晴らしい働きに、感謝以上のものを感じたからである。入院経験のある人がみな口をそろえるのが、看護師さんたちの献身的な看護に救われたと言うこと。そして、あんなに忙しいのに、なぜあんなふうに人を癒せるのか。なぜあんなににこやかに仕事ができるのか。私たちは皆、仕事が忙しいときの精神状態を体験的に知っている。忙しさと他者への思いやりを両立させることが1番難しいことを知っている。なのに看護師さんは秒刻みの忙しさの中でなぜ人を包み込むことができるのだろうと、それが不思議でならなかったという声もある。医療従事者としての義務感だけでは難しい。使命感なのか正義感なのか、それ以上に人の命の尊さをよくよく知っている人たちだからこそ、どんなに小さな疾患でも傷んでいる者を労り励ましてくれる。まさにそれを天職とする人たちなのだろうと。

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忙しさと他者への思いやりを両立させることが1番難しいことを知っている。なのに看護師さんは秒刻みの忙しさの中でなぜ人を包み込むことができるのだろうと、それが不思議でならなかったという声もある。医療従事者としての義務感だけでは難しい。使命感なのか正義感なのか、それ以上に人の命の尊さをよくよく知っている人たちだからこそ、どんなに小さな疾患でも傷んでいる者を労り励ましてくれる。まさにそれを天職とする人たちなのだろうと。

かつてナイチンゲールが「白衣の天使」と呼ばれたように、患者にとってその人たちは本当に天使に見える。しかし彼女たちは今や白衣ではなく、もっとラフなパンツスタイルのユニフォームにスニーカーで、病室から病室へと静かに駆け回る。ナイチンゲール自身は天使と呼ばれるのを嫌い、私たちは「天使のように美しい花をまき散らす者でなく、苦悩する人々のために戦う者である」と語ったと言われるが、まさに今、飾られた花のような美しさより、額に汗して誰かのために働く、尊い仕事に就く人こそ美しい、そういう時代なのである。

ましてやこのコロナ禍で、感染者を受け入れる病院のスタッフの働きは想像を絶するもの。しかしそういう人たちに対して、自分たちはあまりに無力だ。医療従事者への感謝の気持ちから、イルミネーションを青いライトにしても、それにスマホを向けてキレイキレイと喜ぶ時間もない人たちに、一体何をしてあげられるのだろうか。せめて私たちは、そういう仕事に就く人たちの魂の美しさを心から賛美してあげるべきなのではないか。

「流汗悟道」……自分で汗を流し、体験してみて初めて本当のことが見えてくる。一生懸命に取り組むことで、物事の道理を知ると、明るい未来が切り開けると言う教え。だから世の中を明るく照らしだすこともできるのだという教え……コスメキッチンが2021年に向けたテーマである。

その言葉の意味を知って、真っ先に脳裏に浮かんだのが、息つく暇もないのににこやかに駆け回る看護師さん達の姿だった。その人たちは、理屈ではない、汗して働くことで、誰より早く人間が生きることの本質を悟ったのだろう。だからどんなに忙しくても明るい笑顔を絶やさない。まさに流汗道悟を象徴する人たちなのだ。何もできなくても、何も手伝えなくても、ただただ敬意を表して、心からの感謝と、その人たちの無事を祈りたい。

Kaoru Saito Kaoru Saito

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