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Kaoru Saito's Column

<第二章> Hygge

愛する人と何でもない話題で何時間も話ができる、
それがほのかな幸せ、ヒュッゲである。

「結婚生活は、長い会話である」という言葉がある。哲学者ニーチェの有名な"名言"だけれど、そこには、2つの意味が込められていると言われる。

結婚は、決して変化に富んだものではなく、2人でただ際限なく話をしている日々。時には退屈に感じたりすることもあるのかもしれない。でもそれが結婚であると言う教え……。でももう1つは、"お互いを深く深く理解しあった2人なら、いつまでも終わりのない会話を続けられるはずで、その会話こそが生きている上で最も尊い時間である"というふうに、読み解く教え。

さて、どちらが真実だろう。実はその答えを見せてくれたのが、ヒュッゲと言う価値観だった。
様々な形の"幸せ調査"で、圧倒的に上位を占めるのは北欧諸国。でもなぜ、北欧諸国の人々ばかりが申し分のない幸せを日々の中に感じることができるのか?世界中が不思議に思ったが、そこで浮かび上がってきたのが、「ヒュッゲ」と言う価値観、日常の何気ない瞬間にも幸せを感じる心であった。とりわけ家族や友人とのふだん着のおしゃべり、その時間こそがヒュッゲであると言うのである。まさしく終わりのない長い長い会話を、幸せと思えるかどうか?それが幸せの量を決めるということなのだ。

例えば、誰かと恋をして、デートを重ねる時、1分1秒を惜しむように夢中で会話をするのだろう。でもそれは、お互いの魅力だったり、2人の共通点だったり、新しい関係を築くために必要な会話だったりするから、話題に事欠かず話し続けるはずだけれど、でもある期間を過ぎると、まるでもう一生分の話をしてしまったように話題が見つからなくなるのかもしれない。

でもきっと、それから先もずっとずっと話をし続けられる相手こそが"運命の人"なのだろう。本当になんでもない日常の一コマに、なんでもない話題で、何時間でも話ができる。庭に咲いた花の話題で、飽きずに話し続けられる。一緒に見た映画の話を呆れるほど長くできる。ニュースを見ながら、議論もできる。できるなら、話しをしながら笑いあえる。そうした会話の全てがヒュッゲ。長い長い会話こそが、ヒュッゲなのだから。

いやパートナーに限らず、親しい間柄に限らず、初めて会った人でさえ、相手に好感をもち、相手のことを知りたいと思う素直な気持ちがあれば、その会話は必ず幸せな時間になる。ヒュッゲになる。いや、それこそがヒュッゲだと知った途端、会話の相手がいる幸せも含めて、会話がもたらす幸せってどういうものか、その瞬間瞬間が教えてくれるはずなのだ。

たった1つの約束は、相手の目をまっすぐ見ること。それだけで魂が向き合い、良い会話ができるはずだから。人と人とが言葉を交わす時間ほど、幸せなものはないと、心から思えるはずだから。

齋藤薫美容ジャーナリスト/エッセイスト

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。最新刊は初めての男モノ『されど、男は愛おしい』(講談社)。また『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など多数。

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